古来日本の鬼は隠れるという意味の隠が変化したものではないかといわれています。目に見えない隠れたものと考えられ、自然災害、疫病の流行など人の領域を越えた不思講な出来事を鬼の仕業と考え、恐れ、また敬うようになったといわれています。また、鬼は人の心の不安感に根ざして慎みの心や恐れの心がつくり出したものとも考えられているようです。
鬼は頭に角がはえ、大きな牙をはやし、虎皮のふんどし姿が一般的です。これは昔、陰陽道で鬼門の方角の北東方向を丑寅といったので牛の角、虎柄のふんどしとなったようです。
鬼の由来
地蔵菩薩(お地蔵さん)の由来
地蔵菩薩は釈迦の入滅後、56億7000万年後に弥勒菩薩が出現するまでの無仏世界において六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)を輪廻する衆生の苦を救う役目を担うといわれています。もし、人が地獄に落ちても助けてくれる佛はいません。ただ地蔵菩薩だけが救いの手を差しのべて苦を和らげて極楽浄土へ連れて行ってくださるといわれています。またこの世では、子どもを守リ、救う菩薩として一般的に知られています。
地蔵菩薩は僧侶の姿で、袈裟をまとい、左手に宝珠、右手に錫杖を持つ姿が一般的です。
作者のひとり言
個展の折に、「なぜ鬼と地蔵を描くのか?」とよく聞かれます。
10年位前に私の住んでいる下関市の狗留孫山(くるそんざん)に登山した時に山道に真っ赤な前掛けをしたお地蔵さんが沢山ありました。登山時に「よく来たね」とあたたかく出迎えてくれ、下山時には「またおいで」とやさしく見送ってくれる、そんな気がして、それからお地蔵さまに愛着を感じ、地蔵画を描くようになリました。
その後、書物で仏教では地蔵菩薩の化身が地獄の閻魔大王であることを知りました。閻魔大王は死者の生前の行いを審査し裁き、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)に振りわけ罪を償わせるとのこと。嘘をついても、閻魔大王の鏡に生前の行いが全て映し出されるそうです。ご存知のように一番罪が重たいのが地獄です。閻魔大王配下の鬼が針の山、血の池など死者に罰を与えていますが、一説によると、実はこの鬼はお地蔵さんで死者に対して早く改心しなさいと救いの手を差し出しているとも言われているそうです。ということで、一般的には鬼とお地蔵さんは対極しますが、見方を変えれば表裏一体とも考えられます。それから鬼にも興味を抱き描き始めました。怖い醜い鬼ではなく優しく強い鬼を描いています。人の心にある厳しさや優しさを「鬼・地蔵の詩画」で上手く表現できればと日々頑張っています。頑張り続ければ私もいつかはゴッホになれるかも(笑)。
坂田明秀 墨彩工房 鬼・地蔵
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